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大動脈瘤、大動脈解離、
肺塞栓症

大動脈瘤とは?

大動脈瘤とは大動脈壁の一部が、全周性または局所的に拡大、突出した状態のことです。大多数は無症状ですが、破裂すると生命に関わります。

大動脈瘤の原因

原因としては動脈硬化によるものが最も多くなっています。炎症によるものですと、大動脈炎症候群やベーチェット病などがあります。他には感染によるもの、外傷によるものがあります。先天的結合組織異常ですとMarfan症候群やEhlers-Danlos症候群が挙げられます。

発生部位・形状・病理学的に

発生部位としては

  1. 胸部大動脈瘤
  2. 胸腹部大動脈瘤
  3. 腹部大動脈瘤

形状は

  1. 紡錘状(全周が拡張)
  2. 嚢状(偏側性に局所が拡張)

病理学的には

  1. 真性大動脈瘤
    動脈瘤の壁が三層構造(内膜、中膜、外膜)を維持しているもの
  2. 仮性大動脈瘤
    動脈壁が破綻して形成された血腫による瘤、動脈瘤の壁が三層構造を欠いて、結合組織または外膜のみから成ります
  3. 解離性大動脈瘤
    中膜壁が二層に解離して新たに壁内に形成された偽腔が瘤状に拡張したものです

大動脈瘤とは?

大動脈瘤の治療方法

内科的治療では胸部大動脈瘤では血圧 130/80mmHg未満にコントロールを行います。喫煙している方は禁煙が必要になります。
その上で大動脈基部、上行、弓部では遺伝性疾患等がない場合には55mm以上、もしくは半年に5mm以上の拡大があった場合には手術またはTEVARの適応となります。下行、胸腹部では60mm以上、もしくは半年に5mm以上の拡大があった場合では手術またはTEVARの適応となります。
腹部大動脈瘤は55mm以上が侵襲的治療の絶対的適応であり、50mm以上、もしくは嚢状瘤や半年で5mm以上急速拡大している場合も適応となります。
大動脈瘤の治療方法

腹部大動脈瘤へのEVAR
大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン2020年
出典:https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/07/JCS2020_Ogino.pdf

大動脈解離とは?

大動脈壁の中膜のレベルで2層に剥離し、大動脈の走行に沿ってある長さをもち2腔になり、壁内腔(偽腔)に血流もしくは血腫が存在する病態です。

本来の動脈内腔(真腔)と解離により新たに生じた壁内腔(偽腔)はフラップ(内膜と中膜の一部からなる隔壁)により隔てられます。入口部(エントリー)より真腔から偽腔へと血液が流入して、さらに偽腔内の血流は末梢側の再入口部(リエントリー)より真腔に戻ります。偽腔が瘤を形成するものは解離性大動脈瘤と呼びます。

大動脈解離の原因

大動脈解離の原因原因としては動脈硬化、高血圧、嚢胞状中膜壊死、Marfan症候群、Loeys-Dietz症候群、Ehlers-Danlos症候群があります。

大動脈解離の症状

大動脈解離の症状

解離自体による症状

突然激しい胸痛、背部痛が出現します。痛みは血管が裂ける発症時が最も強く、裂ける部分が伸びるにつれて痛みが背部から腰部へ移動していくことが多くなります。

解離の合併症による症状

    1. 破裂症状
      破裂することで血液が血管外に漏れ出ることで出血性のショックや心嚢内に出血することで心タンポナーデが出現することがあります。
    2. 解離腔による虚血症状
      血管が解離して偽腔が拡大することで血液の流れる真腔が閉塞することで症状が出現します。冠動脈が閉塞すると急性心筋梗塞、腎臓の動脈が閉塞すると腎梗塞、腸管を栄養する血管が閉塞すると腸管虚血、腸管壊死、脊髄への血流が閉塞すると対麻痺を生じます。
    3. 大動脈弁閉鎖不全症
      解離が大動脈弁に達すると大動脈弁閉鎖不全症による呼吸困難などの左心不全を生じることがあります。

大動脈解離の分類

分類としては解離の範囲で分類したものと、偽腔の血流状態による分類があります。

①解離の範囲で分類したもの

解離の範囲で分類したものもStanford分類とDeBakey分類の2種類あります。

Stanford分類

入口部の位置に関係なく、解離の範囲が上行大動脈を含むかどうかのみで分類します。
Stanford分類

A型 上行大動脈に解離があるもの
B型 上行大動脈に解離がないもの
DeBakey分類

解離の範囲と入口部の位置で分類します。

DeBakey分類

I型 上行大動脈に入口部があり弓部大動脈より末梢に解離が及ぶもの
II型 上行大動脈に解離が限局するもの
III型 下行大動脈に入口部があるもので以下にさらに分けられます
IIIa型 腹部大動脈に解離が及ばないもの
IIIb型 腹部大動脈に解離が及ぶもの

②偽腔の血流状態による分類

a)偽腔開存型 偽腔に血流があるもの(大部分の偽腔が血栓化していてもULP(潰瘍様突出)から長軸方向に広がる偽腔内血流を認める場合を含みます)
b)ULP型 偽腔の大部分に血流を認めませんが、入口部近傍に限局した偽腔内血流(ULP)を認めるもの
c)偽腔閉塞型 三日月形の偽腔があり、入口部および偽腔内血流を認めないものです。

大動脈解離の治療方法

StanfordA型は基本的には外科手術になります。B型、解離部分が血栓閉塞している場合には内科にて疼痛管理と厳格な血圧コントロールで加療します。

肺塞栓症とは?

肺塞栓症とは?肺塞栓症とは肺静脈血中に入った塞栓子(血栓、脂肪、腫瘍細胞など)が肺動脈を閉塞した状態を肺塞栓と呼びます。その末梢領域が出血性壊死を来した状態を肺塞栓症といいます。

肺塞栓症の原因

栓子 リスク因子 原因
血栓

血流停滞 長期臥床、鬱血性心不全、長時間のフライト、肥満、妊娠
血管内障害 静脈炎、外傷、手術、カテーテル検査、静脈瘤
血液凝固能亢進 ピロテインC欠乏症、プロテインS欠乏症、AT欠乏症、ループスアンチコアグランド陽性、外傷、手術、悪性腫瘍、経口避妊薬、エストロゲン製剤、脱水、骨髄異形成症候群、ネフローゼ症候群、炎症性腸疾患
脂肪   骨折、美容外科における脂肪吸引
その他   空気塞栓、羊水塞栓

肺塞栓症の症状

肺塞栓症の症状肺動脈閉塞範囲により無症状からショックに至るまで多彩な臨床症状を有します。
安静解除時や排便、排尿時の突発的な呼吸困難や胸痛、頻呼吸、動悸は本性を疑う症状になります。他に血痰、喀血、意識消失、チアノーゼ、ショックを呈することがあります。下肢の深部静脈血栓症を合併する場合には、下肢の腫脹、疼痛があります。

肺塞栓症の検査

肺動脈の造影CTを行い肺動脈の陰影欠損を確認します。シンチで異常がある場合は肺血流シンチを行い血流と換気のミスマッチを証明します。

肺塞栓症の治療方法

本症を疑った場合には呼吸循環の安定化のための酸素投与、抗凝固療法を行います。発症早期には抗凝固療法としてヘパリン、もしくは内服でのDOACを用います。それでも血行動態が不安定な場合には経皮的心肺補助装置(ECMO)を一時的に用いることもあります。慢性化して肺高血圧症を生じた場合で血栓溶解でも改善しない場合には外科的治療もしくは慢性血栓塞栓性肺高血圧症に準じて治療を行なっていく必要があります。