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心房細動

心房細動とは?

心房細動とは文字通り心房が細かく動く病態のことです。
心臓は電気が流れることで心筋が収縮して血液を拍出します。通常は右心房にある「洞結節」と呼ばれるところから電気が発生しますが、洞結節以外の心房で不規則に電気が発生してし、1分間に300-500回程度動くことになります。それが全て心室へ繋がると心拍数が300-500回となってしまい心臓が十分に収縮、拡張して血流を全身に送ることが出来なくなってしまうため、心房と心室の間にある「房室結節」と呼ばれる部分で伝わる電気信号をコントロールして心拍数が60-120程度になるようになります。
心電図の特徴としては心房細動では心房が細かく動いているため、その電気信号を拾って心電図では基線が細かく揺れ動いています。またその電気信号が全て心室に伝わるわけではなく、そのうちの一部だけが心室に流れますが、その心室へ流れる電気信号も一定ではないため間隔がバラバラの不規則になります。

心房細動とは?

出典:日本心房細動週間ウェブサイト

症状は?

脈が速くなることでの動悸、また心拍数が不規則になることでの動悸を感じることが多いですが、無症状の方もいます。血圧測定の際に普段脈拍数が出るはずなのでエラーが出る場合や安静にしていても脈拍するが高くなっていることで気付くことがあります。ご自分で脈拍を測定して脈が不規則であることを自覚される方もいます。最近ですとapple watchなどのスマートウォッチで心房細動が指摘されることもあります。

治療しないと
どのようなことが起こるか?

心房細動で一番怖いのは脳梗塞になります。左心房が痙攣を起こしている状態なので、左心房の収縮拡張が不十分になります。左心房には左心耳という小さな袋状の構造物が生まれつき付いています。通常は左心房が収縮、拡張することで左心耳内に血液の流れが出来るので血液が固まらないのですが、心房細動の状態になってしまうと、左心耳内に血液が鬱滞してしまい血栓が形成されやすくなります。この血栓が出来てしまうと、何かのきっかけで左心耳から左心房内に血栓が流れ込み、そのまま左心室へ行き、心臓から拍出される血液と共に脳に飛んでしまうと脳梗塞を発症することになります。

治療しないとどのようなことが起こるか?

インフォームドコンセントのための心臓・血管病アトラスより
出典:https://med.toaeiyo.co.jp/contents/atlas/

脳梗塞予防をするためには?

CHADS2スコア

頭文字 危険因子 危険因子 点数
C Congestive heart failure 心不全 1
H Hypertension 高血圧 1
A Age 年齢(75歳以上) 1
D Diabetes mellitus 糖尿病 1
S2 Stroke/TIA 脳卒中/一過性脳虚血発作の既往 2

上記CHADS2スコアから年間の脳梗塞発症率を予測しており、0点では1.9%、1点では2.8%、2点では4.0%、3点では5.9%、4点では8.5%、5点では12.5%、6点では18.2%とされています。
そのため脳梗塞予防のためにはCHADS2スコアが1点以上であれば抗凝固薬が推奨となります。抗凝固薬としては直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)である、ダビガトラン(プラザキサ®)、リバーロキサバン(イグザレルト®)、アピキサバン(エリキュース®)、エドキサバン(リクシアナ®)を用います。古くから使われているワルファリンを使う場合もありますが一般的にはDOACを近年は使うことが多くなっています。DOACのメリットとしては効果判定のために定期的な採血が必要ないこと、頭蓋内出血を生じにくい、食事の影響をほとんど受けない、内服すれば効果が早く出てきて、一方中止すれば早く効果が消失します。ワーファリンでは効果判定のためにINRの採血が必要になったり、ビタミンKによって効果が減弱するため納豆やクロレラ、青汁が食べれなくなります。ただし、DOACが使用できない場合もあります。具体的には重度の腎機能障害、維持透析の方、機械弁の弁置換術後、僧帽弁狭窄症に伴う弁膜症性心房細動の場合にはワーファリンが推奨されます。

心房細動自体への治療方法

1 薬物療法

①心拍数調節療法(rate control)

β遮断薬やジギタリス製剤など用いて房室結節を抑制することで心房から心室へ繋がる電気の流れを減らして心室の心拍数を減らします。心房細動自体は持続していても心拍数自体が下がるため動悸症状等が出にくくなります。

②洞調律維持療法
(Rhythm control)

Naチャネル遮断薬(I群)、アミオダロンなどのIII群の抗不整脈薬によって心房細動自体を抑え込み、自然な心房の電気の流れである洞調律をなるべく維持する方法です。
上記患者様の状態、心房細動の状態によって使い分けて治療を行います。

2 カテーテルアブレーション

カテーテルアブレーションとは心臓の中に先端の熱くなっている細長い管を持っていき、その先端を心臓内に押し当ててくることで心臓内の電気の流れ道にヤケドを作って心房細動を治す治療法になります。一般的に心房細動は肺から左心房へ血液が流入する血管である肺静脈内から生じます。左心房内の肺静脈の周りを焼灼することで、肺静脈内に発生する心房細動の細かい電気自体が左心房内に伝わらなくなります。また心房細動は肺静脈以外にも上大静脈から発生することがあるため、上大静脈を電気的に隔離することもあります。焼灼出来たヤケドの部分でしっかりと電気が流れなくなると治療は成功しますが、人間はヤケドがあると治る性質がありますので、焼灼した回路の一部で直ってしまい電気が再度流れるようになると再発します。そのため心房細動は1回の治療で治る方は75-80%とされており、再発する場合には再発した部分を再度焼灼するために2回目のアブレーションを行います。

カテーテルアブレーション

心房細動のアブレーション

インフォームドコンセントのための心臓・血管病アトラスより
出典:https://med.toaeiyo.co.jp/contents/atlas/

3 胸腔鏡下左心耳切除術
(ウルフーオオツカ法)

全身麻酔下で胸腔鏡を用いて左心耳切除と外科的アブレーションを行います。左心耳は血栓を形成する部位になりますので、左心耳を切除することで血栓が出来なくなり脳梗塞予防ができるようになります。通常であれば抗凝固療法が必要になりますが、左心耳を切除することで血栓リスクがなくなりますので抗凝固薬を中止することができます。また、カテーテルアブレーションは心臓内から行いますが、外科的アブレーションは心臓の外側から行う方法になります。これらを組み合わせて胸腔鏡にて手術を行うことで、侵襲が低く、脳梗塞予防、抗凝固療法中止、また心房細動自体の治療を同時に行うことが出来ます。