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ふらつき、めまい、失神

めまい、ふらつき、失神の
症状の分類

めまい、ふらつき、失神は
性状によって3つに分類されます。

  1. 前失神性(presyncope)
    気が遠くなったり、目の前が真っ暗になるような感覚です。
  2. 回転性めまい(vertigo)
    自身または周囲が動いているように感じられる感覚で、ぐるぐる回る感じを自覚します。
  3. 浮動性めまい(dizziness)
    ふわふわと浮いているように感じるめまいです。

前失神性(presyncope)

循環器的な原因となりうるものとしては前失神になります。
脳血流が一時的に低下することで、目の前が真っ暗になる眼前暗黒感や、意識消失などが生じます。てんかん発作との違いは一般的には全身の痙攣は生じません。血流低下で意識がなくなってしまうため、転倒した際には受け身を取ることができず、顔面打撲や挫創など大きな怪我を伴うことがあります。
そのような原因としては頻度の多いものとして起立性低血圧、神経調整性失神、迷走神経反射、状況性失神、不整脈、大動脈弁狭窄症などがあります。

起立性低血圧

起立性低血圧は起き上がった時、立ち上がった時に一過性に血圧が低下して症状を生じるものです。シェロングテストを行なって評価します。仰向けで15分間安静にしたのちに起立直後から1分、3分、10分後に血圧と脈拍の変化を測定します。収縮期血圧が90mmHg以下になるか、起立前と比較して収縮期血圧が20mmHg以上低下、もしくは拡張期血圧が10mmHg以上低下した場合に陽性とします。新起立試験は起立後10分間で一時的に低下した血圧が何分で元に戻るかを確認します。

神経調節性失神

神経調節性失神とは脳循環、圧需要器反射、心理的要因などが関与しています。小学生や中学生で長時間の朝礼で倒れてしまったり、電車で吊り革につかまって立っていたら座り込んでしまったりします。失神発作直前には疲労感、全身の脱力感、気持ち悪さ、冷や汗、顔面蒼白、眼前暗黒感などの前兆が認められます。ティルト検査を行うことで3タイプに分類することができます。Type1は心拍数が軽度低下と血圧低下が合わさる混合型、Type2は心拍数が40回/分以下に低下し3秒以上の心停止となる心抑制型、Type3では心拍数は低下せずに血圧が低下する血管抑制型になります。冷や汗や気持ち悪さなどの前兆が出てきたらその場で座り込んだり、足を動かしたり、組んだりして血圧をあげることで失神予防ができます。また予防のための訓練があります。

起立調節訓練法(ティルト訓練)

起立調節訓練法(ティルト訓練)と呼ばれるもので、両足を壁の前方15-20cmに出して、臀部、背中、頭部で後ろの壁に寄りかかる姿勢を30分継続するものです。これを1日に1,2回毎日繰り返すことで、起立持続時間が伸びていきます。これが効果あるのは立位負荷直後の交感神経の亢進がトレーニングによって抑制されるためと考えられます。

状況失神

状況失神はある特定の状況または日常動作で誘発される失神です。急激な迷走神経活動の亢進、交感神経活動の低下および心臓の前負荷減少による徐脈、心停止もしくは血圧低下をきたして失神します。

男性に多い状況失神

男性で多いものとしては排尿失神になります。過半数が飲酒後に発症し、若年から中年の男性でその傾向が強くなります。発症はほとんどが夜間から明け方になります。排尿による迷走神経刺激が排尿時のいきみや立位による静脈還流の減少に加わって血圧低下や徐脈、心停止をきたします。

女性に多い状況失神

女性で多いものは排便失神です。比較的高齢の50-70歳の女性に多く、切迫した排便や腹痛などの消化管症状を伴う場合が多く、排尿失神とは異なり飲酒の関与は少なくなっています。排便失神は害による末梢血管抵抗減少があり、排便時のいきみによる静脈還流の減少、腸管の機械受容器を介した迷走神経反射が加わって血圧低下や徐脈、心停止をきたします。ただ排便時は血圧上昇なども生じて脳出血や、心筋梗塞、大動脈解離など他の脳血管、循環器疾患自体を発症することもありますので注意が必要です。

不整脈

不整脈としては脈が遅くなる徐脈性のものか、反対に脈が速くなりすぎる頻脈性のものがあります。徐脈としては洞不全症候群や完全房室ブロックなどがあり、約5秒以上脈が延びる時はめまいやふらつき、それ以上になると失神を生じることがあります。原因となる病態を調べてその治療を行いつつ、それでも改善しない場合にはペースメーカーの植え込みが必要になる可能性があります。頻脈ではWPW症候群や発作性状室性頻拍、頻脈性の心房細動などの頻脈性不整脈では十分に心臓が収縮して拡張する時間がなくなるため血圧が低下して一過性に意識消失発作が出現する可能性があります。またさらに怖い不整脈としては持続性心室頻拍があります。これは心室が一定の早さ(100-250回/分)で打つ不整脈であり、脈拍が遅ければ症状が出ないこともありますが、150回/分以上くらいの早いものになると血圧低下にてめまい、ふらつき、意識消失をきたします。これが持続すると心室細動へ移行することがあり、心室細動は心臓自体が細かく震えているだけなので、血圧がなくなり心肺停止状態になります。血圧を維持できていない持続性心室頻拍と心室細動は緊急での除細動の適応になります。

弁膜症

弁膜症では大動脈弁狭窄症、僧帽弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症、感染性心内膜炎等が原因となる可能性があります。この中で頻度的には大動脈弁狭窄症が多くなっています。若い方では二尖弁が原因であったり、高齢の方では動脈硬化によって生じます。聴診での収縮期雑音やエコーで評価を行い、必要に応じて手術等の検討が必要になります。

回転性、浮動性めまい

回転性、浮動性めまい平衡感覚の制御を司る前庭系の障害であり、回転性めまいでは内耳の前庭器官、内耳神経の末梢性の障害、浮動性めまいでは脳幹および小脳にある前庭神経核の中枢性の障害が考えられます。
頻度が多いものとしては回転性めまいを伴う浮動性めまいの原因としては良性発作性頭位めまい症、メニエール病、前庭神経炎、内耳炎の可能性が疑われます。