息切れとは?
通常でも激しい運動などを行うと息切れは出ますので息切れ自体は問題ありませんが、どの程度で息切れが出るのかが重要になります。
修正British Medical Research Councilでの分類になります。
グレード 0 | 激しい運動をした時だけ息切れが出る |
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グレード 1 | 普段通勤で使っていた階段を登るのが息切れが強くなり、途中で一度休まなくてはならなくなった |
グレード 2 | 自宅から駅まで歩けていたが息切れがひどくなり、ゆっくり歩くようになったり途中で休憩を挟むようになってきた、他の人と同じペースで歩けなくなってきた |
グレード 3 | 平坦な道を100m、あるいは数分歩くと息切れのため立ち止まる |
グレード 4 | 息切れがひどくて外出出来ない、あるいは衣服の着替えをする時にも息切れがある。 |
息切れの原因
1 心臓疾患の可能性
- 心不全
心機能が低下している、弁膜症がある、虚血性心筋症がある場合などは十分に血液を送り出すことができず、体に水が貯留傾向となります。特に労作時には肺高血圧症状が出てきて息切れであったり、胸水貯留による息切れが出ることがあります。レントゲンで心拡大、胸水貯留を確認して、心エコーで心機能と弁膜症の評価を行い、採血ではNT-proBNPの上昇がないか確認します。 - 狭心症、心筋梗塞
心臓の筋肉を栄養する冠動脈が狭くなる狭心症や詰まってしまう心筋梗塞の可能性があります。狭心症では徐々に冠動脈が狭くなるため、労作時に症状が出ることが多くなります。一般的には胸痛、胸部圧迫感の症状が出ることが多いのですが、人によっては痛みではなくて疲れやすい、息切れが出るといった症状の方もいます。また、その症状が出ないようにするため歩くスピードが遅くなったとおっしゃる方もおります。心筋梗塞も同様で通常は突然血管が詰まるため安静時の胸痛となりますが、糖尿病があって胸痛を自覚しにくい場合には少し動くだけで息が切れるといった症状が出ることがあります。心電図変化がないか、エコーで壁運動の低下がないか、また採血で心筋逸脱酵素の上昇がないか確認し、疑わしければ冠動脈CTやカテーテルを行います。 - 心房細動などの不整脈
心房細動では脈が不整になり、軽い労作にて脈が速くなってしまい、息切れ症状が出ることがあります。また脈が遅くなる不整脈、例えば洞不全症候群や完全房室ブロックでは労作でも心拍数が上昇しにくいため、労作に見合うだけの心拍出量が得られないために結果として息切れ症状が出ます。心電図で不整脈がないか確認して、もしその際なかったとしても他の時間帯で認めている可能性があるためホルター心電図を行います。 - 肺塞栓症
深部静脈血栓症等が肺の血管に流れ込んで詰まってしまう病態です。酸素を交換できる血液量が減ってしまうため、軽労作でも息切れ症状が出現します。採血でDダイマーの上昇がないか確認し、心エコーでは肺高血圧所見がないか確認します。
2 肺疾患の可能性
- 気管支喘息
アレルギーなどで気道が狭くなり呼吸が苦しくなります。聴診を行うとヒューヒューとする喘鳴を聴取します。 - 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
長期間喫煙を行っていると肺の炎症反応の結果、気道の狭窄、分泌腺の増加、肺胞の気腫性変化等が生じて慢性進行性の閉塞性換気障害を来します。労作時の呼吸困難や咳、痰を特徴とします。
3 貧血の可能性
酸素を全身に運ぶヘモグロビンが低下することで、全身が酸欠状態になって労作時の息切れが出やすくなります。貧血自体も様々な原因で生じるため、貧血があるようでしたらその原因を精査して治療を行います。鉄欠乏性貧血であれば、鉄剤の摂取等を行い、腎性貧血であればエリスロポエチン製剤、HIF-PH阻害薬など腎性貧血治療薬を開始します。
他にも様々な原因で息切れは生じうるため、適宜上記以外も精査を行なってそれに対応した治療を行う必要があります。