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心電図の異常

心電図異常とは?

心電図はP波、QRS波、T波から成り立っており、各々の部分やその間隔、高さで異常が指摘されると病気が隠れている可能性があります。

P波

V1で2相性P波を認めている場合、V1は右前胸部から見ている電気信号であり、それが2相になるということは右房から奥の左房で再度P波が強くなっているためです。そのため左房拡大で生じます。原因疾患としては左房に負荷のかかる僧帽弁狭窄症等になります。
V1で幅は正常でも、高さが2.5mm(0.25mV)以上になっている場合には右房の負荷が大きくなって右房拡大をきたしている際に認めます。

PQ間隔

PQ間隔が延長している場合は右心房の電気が流れる部位から房室結節と呼ばれるまでの電気の伝導が遅くなっています。
薬剤性の場合はβ遮断薬やジギタリスなどが考えられます。薬剤ではI度房室ブロックになりますのでそれを来す疾患の精査が必要になります。短縮している場合にはWPW症候群やLGL症候群などがあります。

Q波

心室の興奮が始まる様子を表すのがQ波になります。正常は幅40msec未満で深さはR波の高さの1/4未満になります。しかし、Q波の幅が40msec以上でR波の高さの1/4以上である場合は異常Q波と呼びます。心室が弱っていて電気興奮が乏しいことが原因となっていることによる可能性があり、疾患としては心筋梗塞、心筋症、心筋炎などで認められることがあります。

QRS波

QRSの幅

QRSの幅は通常60〜100msecとなりますが、その幅が100〜120msecでは不完全脚ブロック、120msec以上では完全脚ブロックとなります。脚ブロックには右脚ブロックと左脚ブロックがあります。房室結節から心室へ電気が流れる際に、右脚と左脚前肢、左脚後肢の3つの伝導路を通ります。
右脚ブロックは1000人中3人程度は指摘されます。右脚自体が切れやすいもので、切れていても左脚が残っていれば問題ないため、多くの場合、異常はありませんが精査は必要です。
一方左脚ブロックですが通常左脚は右脚と違い切れにくい部分であり、左脚ブロックを呈している場合にはそこが壊れるだけの何かがあった可能性が疑われるため、具体的には心筋梗塞や心筋症などの精査が必要になります。精査の上で何もないようでしたら経過観察となります。

QRSの高さ

V1でR波が増大している場合には、V1の心電図パッチの貼ってある右前胸部に近い右室が肥大していることが疑われます。右室に負荷のかかる肺高血圧などが考えられます。
V1のS波とV5のR波の高さを合わせて35mm以上あれば左室が肥大していることが疑われます。疾患としては高血圧が続いたことでの左室肥大、大動脈弁狭窄症による左室負荷での左室肥大、肥大型心筋症などが挙げられます。
反対にR波が低い低電位の場合には心筋の電気の流れが外に伝わりにくくなっている心嚢液貯留や、心臓の筋肉の電気の流れ自体が弱ってしまっているアミロイドーシスなどの心筋症、陳旧性心筋梗塞などが可能性として考えられます。

ST波

ST上昇

心筋梗塞、冠攣縮性狭心症、急性心膜炎、心室瘤が考えられます。

ST低下

労作性狭心症、また心内膜の虚血を表すため左室肥大を来す高血圧や大動脈弁狭窄症、肥大型心筋症などでも生じる可能性があります。ジゴキシンの血中濃度が上昇して生じる薬剤性の可能性もあります。

T波

高K血症でT波は増高しテント状T波、低K血症では平低化します。心筋梗塞も急性期はT波が高くなりますが、時間の経過とともに陰性T波へ変化します。左室肥大等でも陰性T波を認めます。

QT時間

QT時間は電解質の濃度を反映することが多いです。QT延長では低カルシウム血症、低マグネシウム血症、低カリウム血症、またQT延長症候群や徐脈でも生じます。QT短縮は高カルシウム血症やジギタリス、頻脈で認めます。

U波

U波が増高する場合は低カリウム血症、陰性U波は心筋虚血や左室肥大で認められることがあります。