高血圧とは?
高血圧は脳卒中や心疾患の最大のリスク因子とされています。20歳以上では二人に一人は高血圧です。高血圧の定義ですが日本高血圧学会では診察室では140/90mmHg以上、家庭血圧では135/85mmHg以上となります。
血圧はどのように、どのタイミングで測定するのが良いでしょうか?
家庭血圧測定方法(日本高血圧学会)
- 上腕で測定する自動血圧計を用いる(手首血圧計は動脈圧迫が困難である場合があり不正確になることがあるため)
- 朝は起床後1時間以内、排尿後で朝食前、服薬前に座位で1、2分の安静後
晩は就寝前に座位で1、2分の安静後 - 測定は原則2回としてその平均をとる
朝、晩いずれかの平均値が135/85mmHg以上となった場合に高血圧と診断します。
高血圧の原因は?
高血圧の原因としては動脈硬化の結果として血圧が上昇する本態性高血圧と他の疾患が原因となる二次性高血圧があります。
二次性高血圧としては甲状腺機能亢進症、低下症、副腎疾患の原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫、腎動脈狭窄による腎血管性高血圧、睡眠時無呼吸症候群等があります。
二次性高血圧の場合には降圧薬の内服ではなく、もともとの原因の疾患を治療する必要があるため当院ではまず高血圧の診断となった場合には上記二次性高血圧の鑑別を行います。
目標血圧
動脈硬化の危険因子や合併症があるかどうかで目標血圧は変わります
- 75歳未満、脳血管障害(両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞なし)、冠動脈疾患、慢性腎臓病(尿蛋白陽性)、糖尿病、抗血栓薬内服中であれば目標診察室血圧130/80mmHg未満、家庭血圧は125/75mmHg未満
- 75歳以上の高齢者、脳血管障害(両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞あり、または未評価)、慢性腎臓病(尿蛋白陰性)では目標診察室血圧140/90mmHg未満、家庭血圧は135/85mmHg
- ただし近年は心血管疾患リスク因子を有する高齢の方においては、収縮期血圧120mmHg未満にすると心筋梗塞、急性冠症候群、脳卒中、心不全、心血管死が減るというデータが出て来ており、どこを目標値とするかは患者様の状態、背景によって決めていくことになります。
N Engl J
Med2021;384:1921-1930より
出典:https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1901281
治療は?
まずは生活習慣を正しましょう。
- 塩分6g/日未満の減塩
- 野菜、果物を積極的に摂取し、飽和脂肪酸、コレステロールの摂取を控える
- 適正な体重の維持:BMI(体重(kg)÷身長(m)2) 25未満
- 運動療法:軽度の有酸素運動を毎日30分、または週180分以上行
- 節酒:アルコールとして男性20-30g/日以下、女性10-20g/日以下に制限する
- 禁煙
実際1日に塩分をどのくらい摂取しているかご存知ですか?
年齢、身長、体重、随時尿検査(Na:ナトリウム、Cr:クレアチニン)を用いることで推定1日食塩摂取量を推測することができます。
24時間尿Cr排泄量(mg/日)=[体重(kg)×14.89]+[身長(cm)×16.14]-(年齢×2.043)-2244.45
24時間尿Na排泄量(mEq/L)=21.98×[随時尿Na(mEq/L)÷随時尿Cr(mg/dL)÷10×24時間尿Cr排泄量]^0.392
推定1日食塩摂取量(g/日)=24時間尿Na÷17
1日食塩摂取量計算式
1日の食塩摂取量は、随時尿(Na/Cr比)から推算できる。(Tanakaの式)
上記で1日の推定塩分摂取量を計算することが出来ますので、外来にて尿検査をおこなっていただくことで推測が可能になります。
塩分はナトリウムですが、カリウムはナトリウムの血圧上昇作用に拮抗的に作用することから、野菜、果物などカリウムを多く含む食べ物の接種により降圧効果が期待できます。ただし糖尿病の場合にはカロリーの摂りすぎ、また慢性腎臓病の場合にはカリウムの摂りすぎに注意が必要です。
食事のパターンも大事でDASH(Dietary Approach to Stop Hypertension)食や地中海食は降圧効果があることが示されています。
DASH食とは塩分と炭水化物を抑えて、カリウム、カルシウム、マグネシウムのミネラルと食物繊維を多く摂取する方法になります。これら3つのミネラルが塩分を排泄する働きがあります。野菜(大豆、大豆製品、にんじん)、乳製品、果物(バナナ)、肉、魚などの食品に含まれています。
地中海食も似ており抗酸化作用のある果物、野菜を多く使用しつつ、不飽和脂肪酸を多く含んだオリーブオイル、ナッツなどの未精製の穀物を使います。飽和脂肪酸を多く含む肉の摂取が少なく、代わりに魚を多く使います。
伝統的な日本食も近い食事ではありますが日本では塩分が高くなりがちになりますので、減塩を意識的に心がけることでより良い食生活になります。
飲酒量
お酒に含まれるアルコール量の計算式は以下になります。
純アルコール量(g)=摂取量(ml)×アルコール濃度(度数/100)×0.8(アルコールの比重)
例:ビール500ml(5%)の場合の純アルコール量 500(ml)×0.05×0.8=20g
そのため男性では1日あたり日本酒1合、ビール中瓶1本、焼酎半合、ウイスキーダブル1杯、ワイン2杯以下、女性ではその半分以下が勧められています。
喫煙
たばこは1本でも血圧上昇を引き起こすことが知られています。血圧のみならず脳新血管系疾患、癌、呼吸器疾患の危険因子となります。受動喫煙によっても同様にリスクが上がるためご本人だけではなくご家族のためにも禁煙をお勧めします。
上記生活習慣の是正を行いつつ、本態性高血圧に対して必要な薬物療法を行います。循環器専門医である医師が患者様に応じたしっかりとした高血圧加療をさせていただきます。