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脈の乱れ・脈が飛ぶ、動悸

脈の乱れとは?

脈の乱れとは?脈の乱れとは、①脈が飛ぶ②脈が遅い③脈が早いに大きく分けられます。
以下にてご説明していきます。

①脈が飛ぶ場合

一般的には期外収縮が出ていることが多くなっています。期外収縮も上室性期外収縮と心室性期外収縮に分けられますが、上室性期外収縮はあまり症状は出にくく、心室性期外収縮の方が症状を感じることが多いです。ドクンといった動悸であったり、期外収縮後に一旦脈が少し延びることで脈が飛んだといった症状(欠滞)を自覚することがあります。数が少なければ様子を見ていても大丈夫ですが、症状が強い場合にはβ遮断薬などを用いることがあります。
この心室期外収縮は数がとても大事になり、1000発/日以上あると突然死の可能性が上昇、また10000発/日もしくは総心拍数の10%以上になると心機能が低下する原因になったりします。そのため心室期外収縮を指摘された場合には必ずホルター心電図を行い1日に何回発生しているか評価、必要に応じて心エコーで心機能の評価を行います。数が多い場合には何が原因なのか、虚血性心疾患なのか他のサルコイドーシスやアミロイドーシスなどの心筋症がないかMRIなどを行って評価します。その結果によってβ遮断薬だけで良いのか、もしくは原疾患が別にあるのであればそちらの治療を行なっていくことになります。

②脈が遅い場合

正常な脈は60~100回/分ですが50回/分未満になることを徐脈と呼びます。徐脈には洞不全症候群と房室ブロックに2種類があります。
脈が遅くなることでの症状としては心臓が打つ回数が減るため心拍出量が低下することでの症状が出ることがあります。脳への血流が低下することでめまい、ふらつき、眼前暗黒感、失神また心拍出量が低下することで労作時の息切れなどが出ることがあります。

1 洞不全症候群とは

洞結節の働きが悪くなるため心臓を興奮させる最初の電気信号が出にくくなる病態です。洞不全症候群は3つに分類され、I群は50回/分以下の持続性の徐脈になります。P波は一定の間隔で発生していますが50回/分以下になっています。II群は洞停止、洞房ブロックがあり、洞停止とは洞結節の電気の流れを表すP波の間隔が突然延長して、その長さが本来のPP間隔の正数倍にならないものを言います。洞房ブロックでは延長したPP間隔が本来のPP間隔の正数倍になります。III群は徐脈頻脈症候群と呼ばれています。I、II群の他に心房細動、心房粗動、発作性上室性頻拍を伴います。具体的には頻脈性の発作性心房細動が停止して洞調律に戻る時に数秒間ポーズが見られる場合がこれに当てはまります。

2 房室ブロックとは

房室ブロックとは心房から心室への興奮伝導の遅延、途絶のことです。I〜III度房室ブロックに分類されます。

I度房室ブロック

I度房室ブロックとは房室伝導時間が延長したものであり、心電図で表すとPQ間隔が0.2秒以上となります。

II度房室ブロック

II度房室ブロックは2つに分かれます。1つ目がWenchebach(ウェンケバッハ)型であり、心房から心室へ流れる電気の流れが徐々に悪くなるためPQ間隔が次第に延長して、数回に1回心室へ電気が流れなくなりQRSが1回脱落します。
2つ目はMobitz II型(モビッツ)です。WenchebachではPR間隔が徐々に延長していましたが、Mobitzでは延長はせずに、急に心室へ電気が流れなくなりQRSが1回脱落します。

III度房室ブロック

III度房室ブロックは別名完全房室ブロックと呼びます。心房から心室への刺激伝導が完全に途絶します。心電図では心房自体は一定に動いているためPP間隔は一定です。心室は電気が伝わらなくなると突然死してしまうため、そうならないために房室結節の下あたりから補充調律と呼ばれる30-40回/分程度の心室を動かす電気が一定の間隔で流れます。そのため心電図では心室の動きを表すRR間隔も一定になります。しかし心房と心室は電気的につながっていないためPR間隔は不規則の、房室解離という状態になります。

洞不全症候群、房室ブロックともに、薬剤などの2次性の影響が除外されて、失神などの脳虚血症状であるAdams-Stokes発作があったり、心不全症状があれば恒久的ペースメーカー植え込みの適応となります。

③脈が早い場合

脈が100回/分以上になる場合を頻脈と呼びます。

1 洞性頻脈

洞結節の自動能亢進により心拍数が100回/分以上となった状態です。甲状腺機能亢進症や貧血、興奮、発熱、運動などで生じている可能性があります。原因疾患の特定と、それに対する治療が優先され、甲状腺機能亢進症の重症の場合にはβ遮断薬を用いることがあります。

2 発作性上室性頻拍(PSVT : paroxysmal supraventricular tachycardia)

心房ないしは房室結節部が原因となる「突然」の発症と消失が特徴的な頻拍です。この中には房室回帰性頻拍(AVRT)がPSVTの約70%を占め、房室結節回帰性頻拍(AVNRT)が約20%を占めます。

その他

心房頻拍(AT)が残りの10%を占め、他のまれなものとして房室接合部頻拍(AVJT)、洞結節回帰性頻拍(SNRT)などがあります。

治療としては

発作時には迷走神経刺激(息こらえ、Valsalva手技)が有効なことがあります。ベラパミルの頓服も有効です。血行動態が破綻しかけているなど緊急時には電気的除細動を行う必要があります。心臓内の電気回路の異常が原因となっているため根本的な治療としてはカテーテルアブレーションになります。

3 WPW症候群

僧帽弁輪もしくは三尖弁輪に、心房と心室を電気的に連結する副伝導路(Kent束)がある場合をWPW症候群と呼びます。房室回帰性頻拍をきたす他、発作性心房細動を合併した場合には血圧低下などをきたす場合があります。
発作性心房細動を生じるとKent束を介して心室へ伝わるため、心拍数が200回/分以上になったり、血圧低下から意識消失をきたすことがあります(偽性心室頻拍)。
副伝導路を心房から心室へと伝導する電気は、房室結節を介した通常の房室伝導よりも速いため、この副伝導路を介した心室の早期興奮がQRSの立ち上がりにスラー(デルタ波)を生じます。心電図の特徴として、PQ間隔は短縮しデルタ波を認め、QRS幅は広くなります。
根治治療としてはKent束を焼灼するカテーテルアブレーションになります。

4 心房頻拍

頻拍の発生は、維持に心房のみを必要とする頻拍です。心臓手術後などでは心房切開部分の瘢痕組織が伝導途絶し、リエントリー回路が形成されることで生じます。カテーテルアブレーションでの治療が有効になります。

5 心房粗動

規則的な心房内リエントリーで、心房の興奮頻度は250-300回/分程度になります。房室結節で伝導比が調整されるため、2:1や3:1の心房粗動となることが多いです。

分類

  1. 通常型
    三尖弁輪周囲を半時計方向回転するリエントリーによるもの
  2. 非通常型
    三尖弁輪周囲を時計方向回転するリエントリーによるもの

通常型の場合はカテーテルアブレーションによって三尖弁下大静脈峡部を焼灼します。成功率は高いためカテーテルアブレーションをお勧めします。

6 心房細動

別ページご参照ください。

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7 心室頻拍

His束より遠位の心室起源から発生して3拍以上連続して出現します。100〜250回/分の頻拍となり、血圧低下、意識消失を来したり、心室細動へ移行することもあります。
持続時間が30秒未満であれば非持続性心室頻拍、30秒以上持続する場合には持続性心室頻拍となります。心筋梗塞後であったり、拡張型心筋症に見られることがあります。
この不整脈を新規に認めた場合には緊急を要する場合がありますので、必要に応じて精査のできる提携病院へご紹介させていただきます。