心機能の悪い方には心臓再同期療法?伝導系ペーシング??どちらが良いの?(JAMA Cardiologyより)
🫀 心不全治療の新しい選択肢は本当に有効?
最新研究で分かった「ペースメーカー治療」の違い
心不全の患者さんの中には、心臓の電気の流れが乱れることで、心臓の動きが中隔と側壁で同時に収縮しないために心拍出が減ってしまう方がいます。その場合心電図ではQRS幅が広くなりますのでwide QRSという状態になるのでそれで判断します。心不全症状があり、心臓の収縮力が弱くて、左脚ブロックのあるwide QRSの方には今まで「心臓再同期療法(CRT)」というペースメーカー治療が行われていました。どのようなものかというと右心室に右室リードを、左室のリードは左心室内は留置出来ないので、冠静脈洞というところを通って左室の外側を通っている静脈に留置して、左心室を左室リードと右室リードで挟み込んであげて同時に刺激することでその心臓の拍出量を増やしてあげます。そうすることで心機能が改善して、心不全、予後を改善させるというものになります。ただ手技が煩雑になるのと、手技時間、放射線量が増えてしまうこと、ペースメーカーの機械の費用が高額になってしまうため、適応となる患者さんをしっかりと選ばなくてはいけないという状況となっています。
今回、2026年に発表された最新の臨床試験で、
新しい治療法と従来の治療法を比較した結果が報告されました。
🔍 比較された2つの治療
① 従来の治療
両室ペーシング(BiVP)
- 心臓の右と左を同時に刺激であり、長年使われている標準治療になります。
② 新しい治療
伝導系ペーシング(CSP)
- 心臓本来の電気の通り道を直接刺激してより自然な動きを期待した新しい方法になります。
🧪 研究の対象
以下のような患者さん173人を対象に比較されました:
- 心不全(心臓の働きが低下)
- EF(駆出率)35%以下
- 左脚ブロックあり(電気の遅れ)
📊 主な結果(1年後)
❗結論:新しい治療は「従来より劣る」結果
- 死亡・心不全入院などをまとめた評価
👉 新しい伝導系ペーシングの方が約2倍悪い結果 - 心臓の回復(EF改善)
👉 従来の両心室ペーシングの方がより改善(+約4%差) - 死亡率
👉新しい伝導系ペーシング:12.6%
👉 従来の両心室ペーシング:4.7%
💡 ただし良い面も
従来の両心室ペーシングにもメリットはありました:
- 💰 医療費は安い(約7000ドル低い)
- 🚶♂️ 歩行距離はやや改善
⚠️ なぜ新しい治療が劣ったのか?
いくつか理由が考えられています:
- 手技が難しく「習熟」が必要
- 施設ごとの差が大きい
- 心不全のタイプによっては従来法の方が有効
👉 特に経験の少ない施設では結果が悪くなる可能性も指摘されています
🏥 まとめ
✔ 心不全のペースメーカー治療は
👉 現時点では従来の両心室ペーシングが第一選択
✔ 新しい方法(CSP)は
👉 まだ標準治療にはならない可能性
✔ ただし
👉 将来有望な治療であり今後の研究に期待
🩺 当院からの一言
心不全治療は「薬+デバイス+生活習慣」の総合戦です。
デバイス治療は患者さんごとに適応が大きく異なります。例えば重症心不全の方は今回のように両心室ペーシングが良いと思います。そこであえて新しいペーシングを試してみる必要は全くありません。新しい治療の可能性にかけたいという気持ちはあるかもしれませんが、心臓ではリスクは負うものではなく可能性が高く、しっかりとしたデータに基づいた治療を行う必要があります。そのうえでしっかりと保険に準じた治療を行うのが望ましいです。そのためにも今回のような論文というのも意味はあります。患者さんによってはとてもよい場合もあります。例えば心機能はある程度保たれていて、高頻度のペーシングが必要となる場合には良い適応であると思います。今回のように良くないデータであっても表に出てくることで次の新しい治療にもつながるのしっかりとデータを出していくことの大事さも伝わる論文でした。
「ペースメーカーが必要か?」
「どの方法がよいか?」
気になる方はお気軽にご相談ください。


