新しい脂質低下薬『ベムベト酸』について
新しい脂質低下薬『ベムベト酸』について
2025年11月12日に新しく薬価収載された『ベムベト酸(Bempeadoic acid)』(大塚製薬のネクセトール)は、スタチンで十分にLDLコレステロールが下がらない方や、副作用でスタチンが使いにくい方に対して、追加で使える新しい経口の脂質低下薬です。
◆ 作用のしくみ
ベムベト酸は肝臓でのコレステロール合成に関わる酵素『ATPクエン酸リアーゼ(ACL)』を阻害します。スタチンが阻害するHMG-CoA還元酵素より一段上の段階を抑えることで、LDLコレステロールを下げる効果があります。筋肉では活性化しないため、スタチンで見られる筋肉痛などの副作用が少ないとされています。
◆ LDLコレステロール低下効果
海外の大規模試験(CLEAR Harmony試験、CLEAR Outcomes試験など)では、ベムベト酸単独で約17〜20%、エゼチミブとの併用で約35〜40%のLDL低下が報告されています。

図1. ベムベト酸単独および併用によるLDL低下効果(NEJM 2019より)
◆ 心血管イベントへの効果
最近のCLEAR Outcomes試験(2023年)では、スタチン不耐の患者を対象に、ベムベト酸が主要な心血管イベント(心筋梗塞・脳卒中・血行再建など)を有意に抑制しました。

図2. 心血管イベント発生率の低下(NEJM 2023より)
◆ 主な副作用
副作用としては、尿酸値の上昇(痛風の既往がある方は注意)、軽度の肝機能上昇、筋肉症状などがありますが、全体的に忍容性は良好とされています。
◆ まとめ
ベムベト酸は、スタチン治療で目標値に達しない、あるいはスタチンが使いにくい患者さんに対して、新たな選択肢となる薬剤です。内服で使いやすく、エゼチミブとの併用も有効です。
引用文献
- Ray KK et al. Safety and Efficacy of Bempedoic Acid to Reduce LDL Cholesterol. N Engl J Med 2019;380:1022-32.
2. Nissen SE et al. Bempedoic Acid and Cardiovascular Outcomes in Statin-Intolerant Patients. N Engl J Med 2023;388:1353-1364.
発売一年間は2週間が上限の処方となります。当クリニックでもLDLを厳格にコントロールするため多くの患者様にご使用させていただくことになると思います。わからないことがあればいつでもご相談ください。

