糖尿病は「心臓の突然死」のリスクを高める
糖尿病は「心臓の突然死」のリスクを高める
糖尿病は、心筋梗塞や心不全だけでなく突然死(突然の心臓死:SCD)のリスクを大きく高めることが、近年あらためて明確になっています。
2025年に European Heart Journal に報告されたデンマーク全国規模研究では、糖尿病と突然死の関係が非常に詳細に検討されました。
Diabetes and sudden cardiac death: a Danish nationwide study
European Heart Journal (2025) 00, 1–13
大規模研究が示した重要な事実
この研究では、2010年時点のデンマーク全人口約550万人を対象に、突然死の発生を詳細に解析しています。
突然死の発症リスク
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1型糖尿病:突然死の発症率は一般人口の 約3.7倍
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2型糖尿病:突然死の発症率は一般人口の 約6.5倍
特に注目すべき点は、若年〜中年の糖尿病患者ほど相対リスクが高いことです。年齢が若いほど、糖尿病そのものが突然死に強く影響していました。
糖尿病は「寿命」をどれだけ縮めるのか
この研究では、単なる死亡率だけでなく「失われた寿命(life-years lost)」も評価されています。
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30歳時点の1型糖尿病:平均 14.2年 寿命が短縮
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そのうち 約3.4年は突然死が原因
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30歳時点の2型糖尿病:平均 7.9年 寿命が短縮
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そのうち 約2.7年は突然死が原因
つまり、糖尿病による寿命短縮の中で、突然死が占める割合は決して小さくないことが分かります。
なぜ糖尿病で突然死が増えるのか(循環器専門医の視点)
糖尿病が突然死を引き起こす背景には、複数の要因が重なっています。
① 動脈硬化・虚血性心疾患
糖尿病は無症候性の心筋虚血を起こしやすく、気づかれないまま致死性不整脈につながることがあります。
② 心不全・心房細動の増加
糖尿病患者では心不全や心房細動が多く、これらは突然死の重要な基盤疾患です。
③ 自律神経障害
糖尿病性自律神経障害により、心拍や電気的安定性が損なわれ、不整脈が起こりやすくなります。
④ 低血糖
特にインスリンや一部の経口薬では、低血糖が致死性不整脈を誘発する可能性があります。
GLP-1受容体作動薬に注目が集まる理由
近年、糖尿病治療は「血糖を下げる」から「心臓を守る」治療へと大きく進化しています。その中心にあるのが GLP-1受容体作動薬 です。
GLP-1製剤の循環器的メリット
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体重減少による心負荷の軽減
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血圧・脂質・炎症の改善
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心筋梗塞や脳卒中など動脈硬化性イベントの抑制
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低血糖リスクが比較的低い
複数の大規模臨床試験により、GLP-1受容体作動薬は心血管イベントを減少させる薬剤として位置づけられています。
突然死予防という観点からのGLP-1治療
今回の研究はGLP-1治療そのものの効果を直接検証したものではありませんが、
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糖尿病が突然死の大きなリスク因子であること
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心血管リスク全体を下げる治療戦略が重要であること
を強く示しています。
循環器専門医の立場からは、
「血糖値だけでなく心臓の予後を見据えた治療選択」
が今後ますます重要になると考えられます。
まとめ(患者さんへ伝えたいポイント)
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糖尿病は突然死のリスクを大きく高めます
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若い年代でも油断はできません
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寿命短縮の一因として突然死が重要です
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心臓を守る糖尿病治療(GLP-1受容体作動薬など)が注目されています
糖尿病治療は「将来の心臓を守る治療」でもあります。気になる方は、ぜひ主治医にご相談ください。


