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女性は「納豆」を食べると心房細動のリスクが下がる?
― 循環器専門医が解説する、大豆・納豆と心臓の深い関係 ―
心房細動は「女性にこそ注意してほしい不整脈」です
心房細動は、心臓の上の部屋(心房)が規則正しく動かなくなり、細かく震えてしまう不整脈です。
動悸や息切れを感じる方もいますが、自覚症状がほとんどないまま進行することも多いのが特徴です。特に重要なのは、心房細動があると脳梗塞のリスクが大きく上昇することです。
実はこの脳梗塞リスク、
👉 女性の方が男性より重症化しやすい
ことが知られています。そのため近年、循環器領域では
「心房細動は、女性にとって特に予防が重要な病気」
という認識が強まっています。心房細動は「突然起こる病気」ではありません
心房細動はある日突然発症するように見えますが、
実際には 長年の生活習慣や体の変化が積み重なって起こる病気 です。特に重要なのが
- 血圧
- 加齢
- 血管の硬さ
- 心房の構造変化(心房リモデリング)
です。
アメリカの有名な疫学研究「フラミンガム心臓研究」では、
血圧を一時点で見るのではなく、10年以上にわたる血圧の推移として解析しました。その結果、
👉 長期間にわたって収縮期血圧が高めだった人ほど、心房細動の発症リスクが高い
ことが明確に示されています。なぜ血圧が心房細動につながるのか?
血圧が高い状態が続くと、心臓には常に負荷がかかります。
その結果、- 心房が少しずつ引き伸ばされる
- 心房の壁が硬くなる(線維化)
- 電気信号の通り道が乱れる
といった変化が起こります。
これが心房リモデリングです。
一度進んだ心房リモデリングは元に戻りにくく、
👉 だからこそ「起こる前の予防」が非常に重要になります。女性は閉経後から心房細動リスクが上がります
女性では、閉経を境に
- 血圧が上がりやすくなる
- 血管が硬くなりやすくなる
- 心房細動の発症が増えてくる
ことが知られています。
これは、心臓や血管を守る作用のある女性ホルモン(エストロゲン)が閉経によって低下し心臓や血管に影響を与えるためです。
そのため、
👉 閉経後の女性の生活習慣管理は、心房細動予防のカギ
と言えます。「大豆」と「発酵大豆食品」
Non-communicable disease (NCD) という、人から人へ直接感染しない慢性的な疾患という概念があり、世界保健機関(WHO)の定義では運動不足、喫煙、過度の飲酒、そして「不健康な食事」などで引き起こされる癌、循環器疾患、呼吸器疾患、精神疾患とされています。これらは世界の死因の70%を占めています。その中でも「不健康な食事」というのは大きなリスク因子の一つであり、植物性食品中心の食事から高エネルギー、高脂肪食へ移行したことが原因として挙げられます。大豆食品は日本で多く摂取されており、植物性食品摂取が少ない人々において栄養状態を改善する可能性があります。
日本では納豆や味噌、豆腐、油揚げなどがあります。大豆食品には2つのタイプがあり、1つは枯草菌により発酵された納豆や麹菌によって発酵された味噌などの発酵大豆食品で、もう1つは豆腐や油揚げなどの非発酵大豆食品になります。
注目される「納豆」と心房細動予防の可能性
こうした背景の中で、近年注目されているのが
大豆食品、特に「納豆」です。近年の研究では総大豆摂取量ではなく発酵大豆食品の摂取が高血圧リスク、死亡リスクを下げると報告されており、特に納豆は心血管死亡リスク減少との関連も報告されています。また女性では納豆を含む発酵大豆食品の摂取が心血管リスク低下と関連するが、男性ではその関連が認められなかったとする報告もあり性差による違いも指摘されてきていました。
👉先日の国立循環器病センターの報告では男性では納豆摂取と心房細動リスクとの関連は認めませんでしたが、女性では納豆を1日あたり15.3gと多く食べている人は食べていない人に比べて約56%の心房細動発症が抑えられていました。(前向きの吹田研究からのデータですが、もともとのmajor endpointではないためリスク低下というよりも心房細動発症が減っていたという意味合いになります)
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納豆は単なる健康食品ではなく、心房細動の背景にある複数の要因に同時に作用する可能性をもつ食品
と考えられています。なぜ「納豆」が良いのか?
納豆の成分① ナットウキナーゼ
👉血栓と血管内環境への作用
ナットウキナーゼは、納豆の発酵過程で納豆菌が生成するタンパク質分解酵素でネバネバに含まれていて、血栓形成抑制、血流改善、降圧効果があるとされています。
心房細動では、心房内に血液がよどみやすくなり、血栓ができやすくなります。ナットウキナーゼは抗凝固薬の代わりにはなりませんが、血管内環境を良好に保つことで、心房細動のリスクを高める土壌を抑える可能性が示唆されています。
納豆の成分② 大豆イソフラボン
👉女性ホルモン様作用と血管保護
大豆イソフラボンは、女性ホルモン(エストロゲン)に似た働きを持つ成分です。
これにより
- 血管内皮機能の改善
- 炎症の抑制
- 動脈硬化の進行抑制
- コレステロール低下
- 体重減少
といった作用が報告されています。
特に心血管保護作用のあるエストロゲンの低下する閉経後女性においては、血圧上昇や血管老化を緩やかにし、心房リモデリングを抑える方向に働く可能性があります。
ただ、総大豆摂取量が多いだけでは死亡率が低下していないことからイソフラボンの摂取量だけではなく発酵という過程での変化(bioavailability)が重要な可能性が示唆されています。
納豆の成分③ ポリアミン(スペルミジン)
👉「心臓の老化」を抑える視点
近年、医学的に注目されているのがポリアミンです。
ポリアミンは
- 細胞の修復、細胞の生まれ変わりを促進
- 炎症や線維化の抑制して動脈硬化を予防する
- 老化関連変化の抑制、新陳代謝を促進し肌のターンオーバーを正常化にさせる
- 脂肪が燃焼されやすい体質になり太りにくくなる
に関与します。細胞の新陳代謝に不可欠でアンチエイジング効果が期待されています。体内でも合成はされますが加齢とともに減少するため食品からの摂取が推奨されます。
心房細動は加齢とともに心房が硬くなり、線維化していく病気でもあります。ポリアミンは味噌や醤油、チーズや発酵の進んだヨーグルトにも含まれていますが、特に納豆はポリアミン含有量が非常に多いことが知られており、心房細動の「年齢依存性リスク」と理論的に一致します。
納豆の成分④ ビタミンK
👉「血管と心房の硬化」を防ぐという視点
近年、循環器領域で注目されているのがビタミンK2です。
ビタミンK2は体内で- 血管の石灰化抑制
- 血管の柔軟性維持
- 心臓・血管の老化抑制
といった働きに関与します。
心房細動は、加齢や高血圧などを背景に、心房が硬くなり拡大していくことで発症しやすくなる病気です。
納豆は食品の中でもビタミンK2(特にMK-7:メナキノン7)を非常に多く含むことが知られており、心房細動の構造的な発症基盤を抑えるという点で、理論的にも整合性のある食品と考えられます。これらが
- 血圧
- 血管
- 炎症
- 加齢変化
といった複数の因子に同時に作用する結果と考えられます。
「納豆を食べれば防げる」わけではありませんが…
医学的に正確に言うと、納豆を食べれば心房細動にならないとは言えません。
しかし、
- 心房細動の主要な危険因子に
- 日常的に、無理なく
- 長期間アプローチできる
という点で、 納豆は非常に理にかなった食品です。
特に
- 血圧が少し高くなってきた方
- 閉経後の女性
- 家族に心房細動や脳梗塞の方がいる方
には、心臓を守る生活習慣の一部としておすすめできます。
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どのくらい食べるのがよい?
納豆1パック(40~50g)に含まれる主な成分の量は以下のようになっています。
① ナットウキナーゼ
- 約2,000〜4,000 FU(フィブリン分解ユニット)
- FUとは血栓溶解活性を示す指標
👉 1日あたり2000FU(フィブリン分解ユニット)が良いとされており 1パックで十分な量が含まれています
② 大豆イソフラボン(アグリコン換算)
- 約35〜50 mg含まれています
👉 女性ホルモン様作用が期待される量は25〜50 mg/日になるので1パックで十分量含まれています
③ ポリアミン
- 約2~3 mg含まれています
👉食品中ではトップクラスの含有量でありこちらも1パックに十分量含まれています
④ ビタミンK(主にK2:メナキノン-7)
- 約250〜600 μg含まれています、特にひきわり納豆(大豆を砕いて皮を取り除いた後に納豆菌を付けて発酵させる)は約1.5倍含まれています
👉動脈石灰化抑制に関連する摂取量:90〜180 μg/日以上とされているため1パックで十分量の数倍含まれています
納豆1パックに十分な量の動脈硬化予防成分が含まれているため目安としては1日1パック、週3~4回程度となります。
👉ただ大切なのは無理なく、長く続けることです。
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循環器専門医からのメッセージ
心房細動は、
「年齢のせいだから仕方ない」病気ではありません。生活習慣を整えることで、発症を遅らせたり、リスクを下げる余地が大きい病気です。
👉納豆は、今日から始められるシンプルで現実的な心臓ケア!
参考文献


