Apple Watchで心房細動はどこまで見つけられる?― EQUAL試験から見えた可能性と注意点 ―
⌚ Apple Watchで心房細動はどこまで見つけられる?
― EQUAL試験から見えた可能性と注意点 ―
オランダで行われたEQUAL試験(Enhanced Detection and Prompt Diagnosis of Atrial Fibrillation Using Apple Watch)は、脳卒中リスクの高い高齢者において、Apple Watchによる遠隔モニタリングが新規心房細動(AF)をより多く検出できるかを検証した、初の無作為化比較試験です。
J Am Coll Cardiol. 2026 Jan 22:S0735-1097(25)10337-9.
doi: 10.1016/j.jacc.2025.11.032. Online ahead of print.
🧪 研究の概要
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対象:65歳以上、脳卒中リスクが高い方(CHA₂DS₂-VASc高値)
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登録数:437名
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介入群:Apple Watchで6か月間モニタリング(219名)
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対照群:通常診療(218名)
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主要評価項目:30秒以上持続する新規AFの検出
🔎 結果
| Apple Watch群 | 標準治療群 | |
|---|---|---|
| 新規AF検出率 | 9.6%(21例) | 2.3%(5例) |
| ハザード比 | 4.40 | |
| 絶対リスク差 | +7.3% |
👉 特に注目すべきは、無症候性AFがApple Watch群でのみ検出されたことです。
自覚症状がないまま進行するAFを拾い上げられる可能性が示されました。
💡 技術的なポイント
Apple Watchは
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光学式脈波(PPG)で不整脈を検出
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異常が疑われると単極誘導ECG記録を促す
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24時間以内に遠隔判読
という流れで診断精度を高めています。
過去の大規模研究(例:Apple Heart Study)でも、不整脈通知の陽性的中率は高く、技術的信頼性は一定水準に達しています。
⚠️ しかし「見つかる=救える」ではない
ここが非常に重要なポイントです。
🫀 植込み型心電計のRCT:LOOP試験
Lancet. 2021 Oct 23;398(10310):1507-1516. doi: 10.1016/S0140-6736(21)01698-6. Epub 2021 Aug 29.
70歳以上6,004例を対象にしたこの試験では、
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AF検出率:32% vs 12%(有意差あり)
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抗凝固療法開始率:30% vs 13%(有意差あり)
しかし…
❗ 脳卒中発症率は有意差なし
4.5% vs 5.6%
さらに、大出血はやや増加傾向。
つまり
「たくさん見つけて、たくさん治療した」けれど、脳卒中は減らなかった
という結果でした。
🔬 なぜそうなったのか?
追加解析が行われた ASSERT試験 ( Eur Heart J. 2017 May 1;38(17):1339-1344. )では、
👉 脳卒中リスクが明確に上昇したのは24時間以上持続するAFのみ
短時間(例:6分以上)のAFではリスク上昇が明確でなかったのです。
LOOP試験では「6分以上のAF」で治療対象としたため、
本来は治療不要だった可能性のあるAFまで抗凝固療法を開始した可能性が示唆されています。
🧠 私見:ウェアラブル時代のAF診療
今後、Apple WatchのようなデバイスによるAF検出は確実に増えるでしょう。
しかし重要なのは、
*どれくらい持続した心房細動か
*脳卒中リスクはどの程度か
*出血リスクとのバランス
を総合的に判断することです。
「見つけたらすぐ抗凝固」ではなく、
“臨床的に意味のあるAFかどうか” を見極める時代に入っています。
🏥 まとめ
✅ Apple Watchは高リスク高齢者で新規AF検出率を大きく向上
✅ 無症候性AFを拾い上げられる可能性
⚠️ ただし、臨床転帰改善は未証明
⚠️ 過剰治療のリスクも考慮すべき
ウェアラブルデバイスは強力なツールですが、
最終的な判断は“人”が行う医療のバランス感覚が不可欠です。





