GLP1受容体作動薬中止後ってリバウンドするって本当??
📌 研究の背景(なぜ行われたか)
肥満治療薬 チルゼパチド(当院ではマンジャロ) は、体重減少とともに血圧・血糖・脂質などの心臓代謝パラメータを改善することが知られています。
しかし、治療をやめた後に体重が戻った場合、こうした改善効果がどの程度また悪くなるのかはまだわかっていませんでした。
そこで本研究は、治療中に体重が落ちた後の体重再増加が、心臓・代謝の状態にどのように影響するかを調べています。
🧪 研究デザイン(どのように調べたか)
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対象:太り過ぎ〜肥満の成人308名(BMI 30以上、またはBMI 27以上で合併症あり)
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治療:36週間チルゼパチドを投与 → その後治療中止(プラセボに変更)
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評価:治療中止後52週間(計88週)までの体重の再増加割合別に腰囲・血圧・血糖・脂質などの変化 を比較
※ 再増加は、減少した重さに対する戻り割合で4段階に分類(<25%、25〜50%、50〜75%、≥75%)しました。
📊 主な結果(何がわかったか)
① 体重の再増加が大きいほど健康指標の改善が失われる
治療をやめて体重が戻るほど、以下の項目が悪化していきました:
✔ 腰囲(ウエストサイズ)
✔ 収縮期血圧(上の血圧)
✔ 非HDLコレステロール
✔ HbA1c(糖尿病の指標)
✔ インスリン抵抗性※
※インスリン感受性の低下は糖尿病リスク増加と関係します。
特に 体重戻りが75%以上の群 では、最も悪化が顕著でした。
📉 まとめ(HP向け短い要約)
💡 チルゼパチド治療を中止した後、体重が再び増えるほど心臓・代謝リスク指標が改善前に戻りやすい ということがわかりました。
これはつまり:
👉 体重を減らすだけでなく、
👉 減った体重を維持し続けることが、
➡ 心血管や糖代謝の健康を守るために重要である
というメッセージにつながります。
📝 実臨床へのインパクト
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肥満治療では 薬をやめた後のリバウンド対策が重要
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継続的な体重管理や生活習慣の維持が、長期的な心代謝リスク低減につながる可能性が高い
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ではなぜリバウンドが起こるのか?
GLP-1/GIP作動薬は
✔ 食欲を抑える
✔ 胃の動きをゆっくりにする
✔ 血糖を安定させるという作用があります。
中止すると、
🔺 食欲が戻る
🔺 摂取量が増える
🔺 基礎代謝は減量後の低い状態のままとなり、体重が戻りやすくなります。
🔵 リバウンド対策のポイント
① 「薬で痩せる」から「習慣で維持する」へ切り替える
減量期と維持期は目的が違います。
減量期:体重を落とす
維持期:落ちた体重を守る維持期に重要なのは:
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体重を週1回必ず測定
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たんぱく質をしっかり摂る(筋肉を守る)
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週150分以上の有酸素運動+筋トレ
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睡眠7時間前後を確保
「増え始めたのを早く察知する」ことが最大の予防策です。
② 急にやめない(段階的減量)
いきなり中止するよりも
✔ 用量を徐々に下げる
✔ 投与間隔を延ばす
✔ 低用量で維持期間を設けるなどの“ソフトランディング”戦略が理想です。
特に、
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BMIがまだ高い
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糖尿病や高血圧がある
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何度もリバウンド歴がある
場合は、完全中止を急がないほうが安全です。
③ 目標体重の決め方が重要
「美容体重」ではなく
✔ 血圧が改善
✔ HbA1cが安定
✔ 脂質が目標内など、医学的に意味のある体重で止めることが大切です。
④ 中止を考えるタイミング
以下を満たす場合に検討します:
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6か月以上体重が安定
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食事パターンが固定化できている
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週2–3回の運動習慣が定着
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ストレス・睡眠が安定
逆に、
❌ 仕事が多忙
❌ イベント続き
❌ 体重が微増傾向の時は中止に適しません。
🔴 重要なメッセージ
今回の研究からわかることは:
体重が戻ると、心臓・血管リスクも一緒に戻る
という事実です。
肥満は「意志の問題」ではなく
慢性疾患としての体重管理が必要です。
🏥 当院の方針
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急な中止は勧めません
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維持期プランを一緒に設計します
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必要なら低用量での長期維持も選択肢
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心血管リスクも同時に評価します
「痩せる治療」ではなく“健康を維持する治療” を目標にします。
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薬を漫然とずっと続けるのではなく、肥満症が良くなった後、薬がなくても維持できるように生活習慣も含めて一緒に頑張っていきましょう。


